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あーあ、知らなくていいことをどうしてid:bummyは知ろうとするかなぁ!!

 恥ずかしい話ではあるが、私の記憶力は悪い。どういう具合でこうなっているのかはとんと分からぬが、どうにも覚えが悪い。顔を洗いに井戸まで行ったはいいが、水を汲んでからはて自分は一体何をしようとしたのかしらんと首を傾げることも少なくない。この間は歩いている最中に次に出す足は右足だったか左足だったかを忘れてしまい道に立ち尽くしたこともあった。そんな調子だから村の人間からは鳥頭だの抜け作だの呼ばれている。仕舞いには村の悪ガキに、“のろく”はろくでもないから“のしち”にしたらどうだいなどと言われたものだからそのときばかりは頭に血が上って頭を小突いてしまった。この事を根に持った子供が毎日のように同じことを私にいうのでこれだけは忘れずに覚えている。
 底の抜けた鍋のような頭を持つ私ではあるが、それでもお嬢さんのお蔭でなんとか暮らしている。私は元々はこの村の人間ではなかった。数年前に村の田んぼに逆さまに突っ込んで行き倒れていた私を見つけて快方してくれたのがお嬢さんである。村一番の長者の娘であるお嬢さんは心優しい菩薩のような方で、私が名前以外の何も覚えていないことを知るや私を風呂焚きとして雇ってくだったのだ。数秒前のことも忘れるような私にもお嬢さんは分け隔てなく優しくしてくださり、私の一生はお嬢さんのために捧げようと思っていた。あの忌々しい男の娘綺麗な客人がお嬢さんを尋ねてくるまでは。

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